Saturday, January 24, 2009

出社が楽しい経済学

第1回: サンクコスト 【Sunk Cost】
" Forget what has passed and look forward to the future."
  1. 前編 「究極の選択!彼女と焼肉のコスト計算」

    彼女から別れ話を切り出された小山内。これまで散々貢ぎ続けたのだから今さら別れたくないとごねる。彼を励まそうと島課長は超高級焼肉店へと誘う。特別割引のきく会員カードを持つ島は入会金の元をとろうとこの焼肉店に半年間通い詰め状態だった・・・。

    → サンクコスト(Sunk Cost)とは、一度投資したが、もう二度と返ってこない費用のこと。

    このサンクコストに縛られ合理的な判断を見失うことが個人や企業の活動ではよく見られる。貢ぎ続けた彼女への投資は明らかなサンクコスト。そこに愛がないのならキッパリと清算し新たな出会いを求めた方が合理的。さらに高級焼肉店の入会金もまたサンクコスト。元をとろうと無理に焼肉を食べ続けるのは愚の骨頂。体を壊して余計な医療費を払ったりしてしまうかもしれない。

  2. 後編 「推進か撤退か!新商品開発」

    ゼニーの一室で行われる深刻な会議。新型シューズの開発を続けるか撤退するか決断を迫られていた。それというのもライバルメーカーがより高機能な商品を発売し大ヒット。後発のゼニーは勝ち目薄。それでも先輩社員の郷田はこれまでの投資や「会社のメンツ」を理由に開発を進めようとする・・・。

    → これもまさにサンクコストの呪縛。「投資した分を取り戻したい」という思いに加え、「自分たちの過ちを認めたくない」という見栄やメンツが、人をサンクコストに縛り付け、合理的な判断を見失わせる大きな要因になるのだ。
---

第2回 機会費用 【Opportunity cost】
"When making a choice, choose wisely."
  1. 前編 「タクシー?バス? 激突!出張費論争」

    同期から合コンの誘いに浮き立つ新入社員・小山内。そこへ突然、経理担当の下野から、出張費の精算の件で厳しい指摘が飛ぶ。路線バスがあるのにタクシーを利用したのは、明らかな経費の無駄だというのだ。田舎のためバスは1時間に1本で、時間の無駄を省くためにやむを得ずタクシーを、という小山内の主張はあえなく却下。自腹でタクシー代を払わされるはめに。落ち込む小山内そこに先輩社員たちから、「おごるから飲みに行こう」と声がかかる。
    「実りの少ない合コンより、タダ酒の方が得」と小山内はついていくが・・・。

    → 「機会費用」とは、いくつかの選択肢から一つを選ぶ時、選ばれなかった他の選択肢から得られたはずの満足や利益をコストとして捉える考え方。

    例えば、残業をサボって彼女とデートした場合。その時のデートには残業で得られたはずの給料もコストとしてかかっているということになる。小山内君の場合も、バスとタクシーのどちらが得かと考える前に、その時の自分の機会費用について考えるべき。小山内君が、1時間に何件も得意先を回り確実に成果をあげる社員なら、1時間あたりの機会費用はタクシー代よりも高い(タクシーに乗った方が得!)。逆に1時間では大した仕事ができない社員なら機会費用は安く、バスに乗って経費を節減した方が合理的。同じ様に機会費用を考えれば、合コンをドタキャンしてついていった飲み会もけっして「タダ酒」ではないことがわかるはず。

  2. 後編 「なぜ安い?居酒屋激安ランチの秘密」

    昼どきのオフィス。みんなの代表で弁当を買いに行った静香の帰りを待つ間、雑談に興じる面々。話題の中心は、社長直属の「新規プロジェクト」。倉庫に打ち捨てられた状態の自転車を利用し宅配サービスを始めるというのだ。小山内と郷田はそんな事業にメリットがあるはずないと冷笑する。そこへ静香が、近所の居酒屋がもの凄い安さでランチを始めたという情報を持ち帰る。あまりの安さに疑問を感じ、「賞味期限切れの食材を使っているかも」と底の浅い冗談で笑いあうのだが・・・・。

    → 「機会費用」は人の行動だけに限られたものではない。ビジネスの場面では施設や道具など様々なモノの機会費用も検討すべき。

    居酒屋などでよく見る「激安ランチ」も機会費用をうまく活用しているケースだ。夜に営業する居酒屋。昼間はその設備や人が遊んでいることが多い。かといってそれを他のモノに転用するのも難しい。つまり、昼間の営業を始める時の設備や人の機会費用は「ゼロ」。後は材料費と光熱費、そしてわずかな利益を上乗せすることで激安ランチの出来上がり。しかもお昼は客の回転が早く、少ない利益でも充分儲けにつながる可能性も。それを考えるとゼニーの「自転車宅配サービス」もあながち無謀とはいえないのでは。
---

第3回 比較優位 【Comparative advantage】
"No matter when, relatively, everyone has an advantage."
  1. 前編 「ボクの生きる道」

    オフィスで落ち込む新人社員・小山内。同じ新人でありながら、社長賞をとった優秀な同期と比べてのこと。全ての能力で同期にかなわない小山内、彼の生きる道はあるのか?

    → 全ての能力において同期の花形君に劣ると嘆く新人・小山内君。そんな彼を救うのが「比較優位」の考え方。

    例えば、2人で2つの仕事を分業する時、どちらも花形君のほうが得意であっても、機会費用(その仕事をすることで犠牲になる仕事)が小さい仕事に特化、分業することで全体の生産性が上がる。高い能力を持つ花形君であっても能力の低い小山内君とうまく協力することで生産性を高めることができるのだ。ポイントは誰でも何からの比較優位を持つということ。小山内君にも生きていく道はある。

  2. 後編 「万物は流転する」

    ライバル社がレストラン事業から撤退したとの知らせ。ライバル社の状態が悪いのかと思いきや、必ずしもそうではないという。さらに、不思議なことに、ずっと小さな弁当事業は継続。ライバル社の真意はどこに?

    → 自らの強みのある事業にヒトやカネなどの経営資源を集中するというのが「選択と集中」と呼ばれる経営戦略。

     そんな中、ライバル社が現時点で強みがあるとは言えない小さな弁当事業を継続したのはなぜか? ポイントは「比較優位」はあくまで現時点の相対的なものであり、将来、変わる可能性があること。例えば、画期的な新商品や生産技術を開発することができれば、比較優位は変わるのだ。これは個人も同じ。自分がやりたい仕事に、いまは比較優位がなくても、努力を続けることで比較優位となることがあり得るのだ。